高速道路の料金問題

 作者の修士論文が「首都高速道路の料金制度の研究」というものでした。今思えば中途半端で恥ずかしい論文なのですが、ここでは、その要点、高速道路全体の料金制度についての考えを、すごく簡単にですけどご紹介させて頂きたいと思います。また、多くの方にご理解いただきたいので、専門的な言葉は使用しないようにしております。また、裏付け資料として統計データ等も載せるべきなのでしょうが、ここではあくまで簡単な意見紹介なので省略させて頂きました。

 本題に入る前に、現在の高速道路の料金システムを簡単に説明しますと、以下に2点がポイントになっていると思います。
 1.建設費及び維持費を、利用者(通行者)からの料金徴収によってまかない、一定期間で建設費及び維持費を全額徴収し、その後に無料開放する。
 2.建設費及び維持費の計算は、基本的に個別の路線ごとに行うのでなく、高速道路網を全体のネットワークと考え、全体の路線によって計算される。

 また、1故に、その建設及び維持に関して、税金等公的資金は殆ど用いられていません。イメージ的には公的資金を導入しているような感じがありますが、建設という初期投資が莫大なため公的なお金から借り入れているだけで、きちんと返済しなければならないシステムとなっています。殆どというのは、利子率の調整のために交付金が少額支払われていたりするからです。


1.最初に結論!(作者の考える料金システム)
将来的な無料開放をやめ、利用料金の徴収は続けることとする。
建設費及び維持費を、利用者(通行者)からの利用料金だけでまかなうのでなく、一般の税金や、一般道路のための税金にも負担させるもとのする。


2.理由
2-1「将来的な無料開放をやめ、利用料金の徴収を続ける」理由
 仮に、高速道路を無料開放したらと考えてみて下さい。現代社会では多くの方が、より短時間で早く目的地に到着することを希望していると考えられています。そしたら、皆さんは高速道路を利用しますよね、どうせ無料ですし。こうして皆さんがどんどん高速道路を利用すれば、高速道路はより渋滞になってしまいます。そして、一般道と高速道路を比較してより空いている方を利用し続けると考えられるのです。あくまで理論的にはですけど。
 結局、一般道と高速道路、どちらを使っても、目的地への到着時間が同じになるまで、どちらかの道路に車が流入し続けてしまうのです。そしたら、目的地まで一般道も高速道路も同じ時間がかかってしまうのです。・・・これでは、高速道路の意味ないですよね。とても急ぎたい人にとっては困った事態となってしまいます。
 だから、料金を徴収することによって、「料金を支払ってもよいから、早く目的地に到着したい人」=「とても急ぎたい人」が、高速に移動するとことが可能になっているのだと思います、基本的に。

2-2「高速道の建設費及び維持費を、利用者(通行者)からの利用料金だけでまかなうのでなく、一般の税金や、一般道路のための税金をも投入」する理由
 ●一般の税金を投入する理由
 今日の日本では、自動車による輸送は必要不可欠なもので、私たちの生活になくてはならない大切な物流システムの一つになっています。だから、車を移動手段としなくても、私たちは自動車輸送された物(商品等)を利用することによって、道路システム及びその一部である高速道路を利用しているのです。
 早い話が、今日の生活で、「いろいろな物が高速道路を使って運搬されているので、多くの人にとって高速道路が無いと不便だね」というところです。
 多くの人に必要な施設なので、国民全体のお金で作ってもよいのではという発想です。
 ちょっと難しく説明しますと、現在でも高速道路の費用は、「高速道路によって利益を得ている人に払ってもらう」ということになっています。そして高速道路によって利益を得ているのは通行者だから、通行者のお金だけで全て作ろうというのが現在の発想なのです。
 しかし、道路交通システムが発達し、高速道路は日常生活の維持(物流システムとして)に必要不可欠な状態になっているので、その便利良さは、多くの国民が物流システムを通じて利用していると考えることができるのだと思うのです。故に、利用者として国民全体が含まれるのだと思います。

●一般道路のための税金を投入する理由
 一般道路のための税金とは、道路財源と呼ばれている、道路を作るために集められる税金のことで、ガソリン税が有名です。主に自動車を利用している人から徴収れています。
 一般道路と高速道路は、とても密接な関係があります。一般道が渋滞すれば高速道路を利用し、また、高速道路にアクセスするまで一般道路を使用しなければならないからです。そう、両者は、道路システムを一体となって構成しているのです。だから、高速道路が整備されれば、一般道の渋滞の緩和にも繋がるのです。
 と言うわけで、たとえ高速道路を利用しなくても、自動車を路上で利用すれば、高速道路の恩恵に預かっていると考えられるのです。
 ならば、一般道も高速道路もまとめて整備が必要で、そのための費用に、一般道路のための税金を一部回してもらおうという考えです。
 また、先の述べた、利便性の受けるという話でも、一般道路のドライバーは高速道路の利便性を受けているといえると思います。たとえば、高速道路が事故とかで渋滞すると、一般道にもその影響で渋滞が発生することがあるでしょ?


3.あらためて結論
 すごく簡単に説明してきましたが、あらためて結論を説明したいと思っています。
 この問題を語るときの前提として、自動車社会があり、それがつづくということがあります。
 もし、画期的な輸送システムが発明されて、自動車が無くなったら意味がないお話ですから。
 しかし、自動車社会は当分続きそうです、たとえ電気自動車になっても。
 また、一部の利用者からは、その料金の高さが指摘されています。作者も学生時代に通学で時々使用していて、高いなと感じていました。今も高いと思っています。その反面、都市部での渋滞も問題ですよね。
 高速道路の料金問題に関する記事で、解決策が書かれていないことが多いような気がします。まれに書かれていても、「高いので無料開放してほしい」とか「料金を値上げすれば渋滞は減少する」とかの感じでした。それはそれで一理はあるのですが、他の問題も発生すると思います。無料開放すると2-1で述べたように、高速道路の意味がなくなってしまいます。また、高すぎる料金は、高速道路の渋滞を減らす代わりに一般道の渋滞に拍車をかけてしまいます。
 結局、妥協点をさぐるしかないのだと思います。都市部の渋滞は高速道路の更なる整備で、高速道路だけでなく一般道も含めてある程度解消できるのではないでしょうか。
 但し、この論点には自然保護とか環境問題とかとの関連は、複雑になるのでふれていません。最終的には、そう言った他の諸問題とも調整は必要だと思いますが、ここではあくまで料金制度に関しての話題とさせて頂きました。

 一般の税金やガソリン等の税金を高速道路に使用することには、高速道路通行者以外の人からは反論があると思うのですが、やはり、一体化した整備は必要であり、かつ、高速道路を含めた道路というシステム(社会資本)は国民全体の財産であるのですから、実際に高速道路通行者のみのお金に頼るというのはシステム的に問題があるように思います。
 また、高速道路の通行者は同時に一般道の利用者であり、一般道の利用者は同時に一般の国民でもあるワケですよね。逆に言うと、高速道路を通行している人は、一般の国民としての税金を納め、かつガソリン等の一般道路の為の税金も納め、さらに利用料金も支払っているのです。ちょっとややこしいと思いますので、それぞれの支払っている税金と高速道路から受ける便利良さの関係をイメージ図にしてみますね。 

●支払っている対価
高速料金
道路の税金 道路の税金
一般の税金 一般の税金 一般の税金
一般の国民 一般道の車 高速道の車
●高速道路から受ける利益
高速通行
一般道の渋滞緩和 一般道の渋滞緩和
社会資本として 社会資本として 社会資本として
一般の国民 一般道の車 高速道の車

(注)「社会資本として」とは、国民全体が現在の物流システムという財産として間接的に高速道路を利用しているということです。


  以上のように、払う対価と、受ける利益は比例していると考えられるので、作者の考える新料金制度も、不公平な制度ではないと思っています。
 新たな財源に加えて、将来的に無料にする必要もないのですから、一定期間内に費用を回収できるように設定された現在の高速料金よりも安くなるはずです。また、維持費に関しては、無料開放しても必要なるので、本当に無料開放できるのかという問題もあったりしますし、仮に無料開放したとしたら、その後は結局税金で維持せざるを得ないのです。
 だったら、今(建設)の段階から、一般の税金を投入して、無理なく利用者にも優しい道路計画を行ってほしいものです。

 余談になりますが、古くからある高速道路が無料解放にならない理由として、個別の路線ごとでなく高速道路全体で建設費及び維持費の返済計画を行っているということを、論点に上げる方がいらっしゃいますが、これに関して作者は、2-1のような理由で無料開放自体に反対なのと同時に、国民全体の社会資本としての財産という側面を考えると、高速道路ネットワーク全体でひとつと考えるのは合理的であると判断しています。




●追記(平成12年11月20日)
 平成12年11月16日の日経新聞朝刊1面(+5面)に関連記事が載っていました。
 建設省は、都市間高速道路の一部に税金使用を考えているようです。税金の内容は揮発油税等のようです。一部の路線に使用ということで、路線間の料金にどう反映されるのかが疑問点として残りますが、方向性としては望ましいと思っています。
 また、赤字路線等の問題で現在の制度が破綻するのを防ぐという目的もあるようです。
 しかし、財源を税金に求めたからと言って、高速道路が国民全体の生活基盤(財産/資産)だからと言って、ひたすら建設を進めるのはどうかと思います。たしかに国民全体の財産であり、公共性を考えた時に地方の利用者数の少ない地域を切り捨ててよいのかという問題があるものの、建設及び維持にはコストがかかります。費用と国民の利益を十分に吟味して、その供給量を考えていって欲しいなと思いました。  

●お願い(平成18年6月18日)
 最近になって、このページの閲覧数がいきなり激増しました。非常にうれしいことで、閲覧くださった方々ありがとうございます。
 ところで、このページに直接アクセスしてくる方が殆どのようです。そこで、どうやって、このページを発見したのかが知ってみたくなりました。もしよろしければ、下記の掲示板に書き込みして頂けると嬉しいです。
http://6512.teacup.com/koji/bbs
 また、著作権を放棄しているわけではないので、取り扱いについて下記のページに簡単にお願いを書いてあります。このページを見て、考え方を参考にしようとか引用等を考えている方がいらっしゃいましたら(・・・いないとは思いますが、もし、そのような方がいたら嬉しいです)、下記のページを一読頂けますようお願い申し上げます(ページの上の方に書いてあります)。
http://www.geocities.jp/koji_no_hosomichi/03.htm
よろしくお願いします。


●追記(平成23年12月31日)
 最近知ったのですが・・・近畿大学のゼミの授業で作成 していると思われるサイトにリンクされていました。2009年の授業のようです。びっくりです。出所名が「Geocities」になっていました。せめてサイト名である「工事の細道」にして欲しかったです・・・。

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