水平指針の向こう



 雨の夜。
 一週間の仕事を終え帰宅した雨の夜。雨音に誘われて、久しぶりにR32スカイラインで外に出る。
 目的地はない。ただ街の中を走るだけ。飛ばすわけでなく、雨の中を、流れる灯火の中を、ただ走る。
 昔に聴いていた曲と雨音が、疲れた身体に心地よい。

 街の中をゆっくり走る。懐かしいメロディと共に、いつもの水平指針のメーターがそこにある。
 この車もずいぶんと長い月日を共にしている。
 いろいろなことを想い出す。
 楽しく笑い合った日々のこと。
 もう何年も会っていない友人達のこと。
 もう二度と会うことのできない人のこと。

 この車だけではない、R31スカイラインに乗っていた時のことも、R30スカイラインに乗っていた時のことも、
 とりとめなく、想い出があふれてくる。
 若かりし頃より、いつも水平指針のメーター越しに前を見て生きてきたんだなと思った。

 雨の夜。
 雨の音に誘われて、懐かしい曲に包まれて、水平指針のメーターを眺めていた。
 いろいろなことがあったなと思った。
 そして、自分も歳をとったのだな と思った、愛車と共に。



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