SKYLINEシリーズとGT-R |
2000年10月時点において、R35以降のスカイラインについては未発表ですが、雑誌等ではいろいろと話題が持ち上がっています。直6廃止でV6になるとか、セダンは廃止になるかもしれないとか、GT-RはスカイラインGT-RでなくてただのGT-Rとして独立車種となるなどいろいろと書かれています。
次期スカイラインであるR35につていは「こんなスカイラインが欲しい」で書きましたが、ここではGT-Rとそれ以外のスカイラインの関係について考えてみたいと思いました。
以下は勝手な私の意見です。スカイラインに対する世間一般の認識や車好きの認識、メーカーや設計者の開発意図とは異なる点があるかと思いますが、ご容赦ください。
1.簡単な歴史
スカイラインの大きな魅力の一つがレース活動との関わりだと思います。一時期レースに参戦していなかった時期もありますが、ずっとレース活動をしています。
2代目スカイラインで、ボンネットを延長して直6エンジンを積み、わずかですがポルシェの前を走ったのが、スカイラインの伝説の始まりらしいです。そして3代目スカイラインではレーシングエンジンをストリート用にデチューンしたS20エンジンを搭載したGT-Rが登場しました。初代のGT-Rです。最初は4ドアセダンで、後に2ドアハードトップが登場しました。4代目にもS20エンジンのGT-R(GT-Rとしては2代目)は存在したものの、レースに参加することはなかったようです(しかしGT-R以外の車両でラリーに参戦していたようです)。サーキットにスカイラインが帰ってきたのは6代目のRSです。シルエットは別物としましても、Gr.Aにも参戦しました。GTは直列6気筒エンジン搭載車のグレード名のため、高性能なDOHC4バルブ直4エンジンFJを積んだ車はRSと名付けられていました。直6はL20のOHCエンジンしかありませんでした。FJはターボが付き、さらにはインタークーラーが装備されました。そして7代目、最初は4ドアだけでしたが、直6DOHC(ターボ)のエンジンRB20を搭載していました。そして限定モデルのGTS-Rが登場します。やはりGr.Aで活躍しました。そして8代目でRB26を搭載したGT-R(GT-Rとしては3代目)が復活します。Gr.Aで勝つコトを目的として製作され、その目的通りに大活躍でした。9代目・10代目もRB26を積んだGT-Rが存在します。Gr.Aから変更されたGT選手権にも参加しましたが、改造が大きくてちょっと別物という感じがします。しかし、改造幅の少ないN耐・S耐でも大活躍です。
2.レースイメージについて
私には昔のコトは分かりませんが、2代目や3代目でスカイラインのスポーツカーというイメージが確立されたのだと思います(個人的には、スポーツカーに匹敵する乗用車なんですが・・・)。6代目や7代目では、GT-Rこそ無いものの、スカイラインという車がサーキットで活躍していて、その技術が部分部分にフィードバックされている同名の市販車というのがスカイラインのセールスポイントだったと思います。スカイラインファンもいつかはGT-Rの復活を気にしながらも、レーシング車両と同じ名前(グレード)の車に魅力を感じたのだと思いますし、例え下位グレードでも、部分部分にその技術(言葉を変えれば魂・スピリット)があるから、魅力を感じているのだと思います。市販のスカイライン自体は、代によってスポーティーさが強調されたり、ソフト路線に向かったりといろいろと変化していますが、どんなスカイラインでもレースの血を受け継いでいるからこそ、未だに各代のスカイラインに根強いファンがいるのだと思います。不人気の代名詞的な存在となってしまった7代目ですら、根強いファンは存在しています。
GT-Rに関しては、昔のコトはよくわかりませんが、8代目以降のGT-Rの存在意義はレースで勝つことだと思います。
3.R35について
「こんなスカイラインが欲しい」で書いたコトと少し重複してしまうかもしれませんが、V6エンジンへの変更などは今の日産を考えたらしょうがないのかもしれません。伝統を重視すれば直6が望ましいですし個人的にも直6であって欲しいですが、日産の現状を考えたりするとV6やV8で新時代を切り開くというのもアリだと思います。シリンダーの配列の差によるモノ以上の利点を作れば良いのだと思います。また、GT-Rに関しては、レースで勝てる車両ならそれでO.Kだと思います。GT-Rはレースで勝つことが目的の車両ですから。
4.ちょっと変わって公道とサーキットについて・・・
GT-Rはレースで勝つことを目的としていますが、そのレースはあるルールの下で争われ、そのルールの範囲内で勝つことが条件です。だからいろいろな制約もあります。
では、公道ではといいますと、道交法等での規制や安全性、環境問題等の規制によるルールはありますが、レースとは全く異なるものです。だから排気量制限なんかはありません。しかし、今日の技術の進歩と車種の多様化は全ての公道で最速の車を作るのは不可能です。0-400も最高速もタイトな峠もすべて最速という車は無理です(公道で速度を競うのが正しいというコトでは無く、技術の指標としての話しで、公道で走行するとした仮定での話です)。やはり、あるステージにおいての限定的な速さとなってしまいます。と、なれば、スカイラインもどのステージで速い車にするかを考える必要があるでしょう。
レースでも全てのレースで速い車というの難しいと思います。やはりそのターゲットは絞られると思います。故にGT-Rもどのレースで勝つことを目的とするべきか考えるべきだと思います。
5.GT-Rの独立について
1〜4のコトを考えた上で、GT-Rの独立について考えてみたいと思います。GT-Rを独立させた方が日産にとって益なのか損なのかをです。分かりやすくいえば、独立させた方が、GT-Rと他のスカイラインの売上げ合計が、同一シリーズで発売した場合の売上げ合計よりを上回る可能性があるかというコトです。
GT-R独立のメリットとしての意見は、「レースのベース車両としてのGT-Rと乗用車としてのそれ以外のスカイラインを切り離すコトによって、スカイライン自体の乗用車の設計の自由度を向上させて、スカイラインベースグレードでの魅力を向上させること」や、「GT-Rを日産のイメージリーダーとすること」や、「現在国内専用車種のスカイラインを、次期型からはGT-Rを輸出できるようにすること」や、「ベースグレードはGT-Rの廉価版というイメージを払拭させること」などらしいです。ではそれぞれについて考えてみたいと思います。
まず、「レースのベース車両としてのGT-Rと乗用車としてのそれ以外のスカイラインを切り離すコトによって、スカイライン自体の乗用車の設計の自由度を向上させて、スカイラインベースグレードでの魅力を向上させること」についてです。私としましては、本来スカイラインは乗用車で、それをレーシング車に仕立てたトコロも魅力の一つだと思いますが、それは少数意見なんだと思います。この意見の問題はおそらくパッケージの問題で、レースのベース車と乗用車との両立が困難というコトなんだと思います(例えば、R32はGT-Rのデザインを優先させる為にトランクが狭くて使い物にならないというコトだと思います)。しかし、これは設計の工夫で回避できる問題だと思います。確かに難しい問題かもしれませんが、その両立がスカイラインのアイゼンティティではなかったのでしょうか。速いダケの車や快適なだけの車は他にもたくさんありますが、その両立しているスカイラインが魅力的なのだと思います。またデザイン的にも他社の車では両立させて評価の高い車があります。
「GT-Rを日産のイメージリーダーとすること」についてですが、これはスカイライン自体がすばらしい車になれば問題ないコトだと思います。「日産にはスカイラインというすばらしい車があって、さらにその頂点にGT-Rという車がある」という具合でも問題ないと思います。
「輸出」についても、世界に通用するようなスカイラインシリーズを開発できる自信があるのなら、始めから輸出を視野にいれた設計をして、シリーズ全体を輸出してもいいのではないでしょうか。
「ベースグレードは廉価版」、これが一番の問題かもしれませんね。開発コンセプトが違うとはいえ、どうしても格下に見られてしまうというコトはあると思います。しかし、GT-Rを切り離したら、他のスカイラインの魅力が増えるかというとそれは疑問です。やはり車自体の魅力がどれだけあるかですから。逆にGT-Rと別れたスカイラインが普通のデキの乗用車だったとすると、GT-Rによるスポーツイメージもなくなり、他の普通の車と同じ土俵で勝負しなくてはならなくなってしまいます(セールスポイントを一つ失うことになってしまいます)。そしてコレがGT-Rを独立させた場合の一番のデメリットだと思います。
以上のように、私の考えでは、ベース車の出来不出来で、GT-Rを独立させるメリットの存在はどうにでも変化するというコトです。ベース車のデキがよければ、ベース車もGT-Rも売れると思いますし、悪ければ、GT-Rだけ売れて、ベース車はダメダメという事態が予測できると思います。だから、デキの悪かった場合を考えると、「GT-RはスカイラインGT-Rでも日産GT-Rでも、それなりに売れるとは思いますが、GT-Rとは別物となってしまった他のスカイラインは、人気が下がるコトがあっても上がるコトは少ない」というコトになり、デキが良いとどちらも売れるというコトになると思います。だったら、デキが悪かった場合も考慮して、保険という意味でGT-Rはスカイラインシリーズに含めておいた方が望ましい(無難だと)と思います。
6.GT-Rについて
個人的にはレースで勝つための車両を作ってほしいです。その為にはあまり売れなくてもレースに勝てる車両を作るべきだと思います。たぶん8代目であるR32のGT-Rがそういったカンジではないでしょうか。だから販売に関しては税金的に不利である2600CCのエンジンなのでしょうし。でもそのGT-Rの技術を引き継いで、次の代のスカイラインでは一般の人が購入しやすいベース車にもフィードバックされるというのが望ましいのではないでしょうか。エンジンは違っても脚まわり等なんですよね。ただ、8代目の売上げがその評価の高さほど売れなかったのは時代背景だと思います。バブル時代で、スポーツカーよりも高級車の方が売れた時代だったと思います。
また、4で考えたように、レースも公道も、どこで1番を取るかを考える必要があると思います。どこで1番を取るのがスカイラインらしいのか、GT-Rらしいのかというコトです。そして、そのイメージで売るべきなのでしょう。
独立したGT-Rとは別にスカイラインもレースをするのなら、スカイラインシリーズ自体のイメージ的マイナスは少ないでしょうけど、その可能性は低いと思います。しかし、ストリートでは最高速系をGT-Rが受け持ち、タイトな峠はベース車のトップグレードが受け持つなんてのも面白いと思います。3代目の頃、GT-Rがサーキットで活躍しベース車がラリーで活躍したようなカンジです。ベース車はV6だけでなくノーズの軽い直4エンジンを積むのもアリかもしれません。RSの復活というのも面白い話題となると思います。ラグジュアリー系はV6でスポーツ系は直4というワケです。かつてのDOHCのRSとOHCのGTの関係と似せるというワケです。で、更にスペシャルとしてのGT-Rがあればというワケなんですけどね。せっかくいろいろな歴史や伝統を持つ車種なのですから、それを生かした方がイイと思います。しかし、直4を積んだ場合の問題点は、シルビアのと関係でしょうか・・・
しかし、トヨタのレビン&トレノも廃止された今日、スカイラインにあまり多くを望むのもコクというものでしょうか(溜息)。レビン&トレノに限らず、GTOやFTO等、歴史のある車名が減少しつつあり、車好きとしては少し残念です。しかし、せっかくスポーツセダンが復権してきている今日、その元祖でもあるスカイラインには是非とも頑張って欲しいモノです。